ここ数日でたまたまテレビの映画宣伝番組から聴こえてきたせいで、ルー・リードの"Perfect Day"が自分の脳内にもこびりついてしまい、ことあるごとに頭の中で連続再生状態になっている。ヴェンダースルー・リード好きが、無際限に世間へ拡散されてるようにも感じられる。たとえば「パリ・テキサス」におけるライ・クーダーの音楽の使われ方には、緊張感をともなう批評性があったように思われ、そのような対象への眼差しは「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」の成果へも通じると思うが、ルー・リードに対してヴェンダースはけっしてそのような距離感ではなくて、あからさまに対象を愛しみ、心で頼り、憧れと敬愛を込めて、ときにはその作品内で音あるいは人物像を扱っているように感じられる(「時の翼にのって」…しかし何十年も前の記憶で内容はほぼ忘れた。ルー・リード登場場面だけはボヤっと…)。もちろんそれは全然悪いことではないのだが、しかし新作でもこれほどまでに、ほとんど脳内からダダ洩れするかのようにあの声が(しかもテレビから)聴こえてくるというのは、何とも不思議というか、年齢を重ねて自他の輪郭が少しずつ曖昧になってきたある老監督の頭の中が、そのまま電波にのって周囲に漏れ聞こえているかのような…。