雨脚が強いので、挿した傘に雨の打つ音が大きい。フリージャズのドラミングのように、波状的だが一音一音が力強く、断続的でとりとめないが、その強弱の幅はとても豊かである。それを聴きつつ歩き、やがて新緑を深く生い茂らせた桜並木の下に差し掛かると、木々に遮られた傘の音は全体的なアタックが弱くなり、ただし一音あたりの響きが繊細になる。ちょうどドラマーがスティックからブラシに持ち替えてなおも演奏を続けているかのように、ふいに変わる。