Girls In The Thunderbolt Suit


ブギーのアイドル


僕の描く絵には、「Girls In The Thunderbolt Suit」と題されたものが複数ある。卒業制作作品のタイトルもこれである。これは知っている人も多いだろうが、T.REXのアルバム「Bolan's Zip Gun」に収録されたナンバーのタイトルである。このアルバムをはじめて聴いたのは多分高校生くらいのときだったと思う。コンパクトディスク台頭で、レコード屋の棚からLPレコードの割合が極端に少なくなってきた頃で、ロックの歴史的なタイトルが比較的廉価で次々とCD化されていた時期で、T.REXもシルバーの帯のCDシリーズで一挙に並んだ。


「Bolan's Zip Gun」をはじめて聴いたときの印象は忘れがたい。当時馬鹿な高校生の自分は一曲、二曲と聴き進むうち、なんだか混乱したのだが、たぶんこのバンドは、とにかく世の中をなめているに違いない、と思った。で、まじめにやるという気持ちもゼロであろう。と思った。でも、他と違う自分を主張する気もゼロだろう。と思った。まったくありふれた結果になることで何が悪いの?と思ってるのかもしれない。と思った。まあ、とにかく異様な感じがした。とりわけ馬鹿馬鹿しさにおいて際立っているよに感じられたのが、Girls In The Thunderbolt Suitという曲で、これはもはや、大変な何事かなのではないのか?南海キャンディーズの山ちゃん風に言えば「…ばかじゃなかろうか」の一言に尽きるのだった。


福田和也が「甘美な人生」という本の中で、ドリュ・ラ・ロッシュエルの著作の中の一節「遥か彼方では、未だに人生は甘美でありうるだろうか?」という言葉に18歳の頃出会い、「それが問いかけでしかないにも拘わらず、一つの回答を得たと錯覚してしまった」と書いている。


おそらく僕にとってのGirls In The Thunderbolt Suit も、このような「啓示」に近いものだったのかもしれない。・・・ということにしておこう。