それにしても、安井曽太郎は脚フェチではないなあ。。



「金蓉」という絵が、竹橋の国立近代美術館にある。最近修復されてちょっと話題になったヤツである。


この絵が、僕はワリと好きである。べろんと真ん中より少し上から左下にかけて衣服を纏った人体の青い色が画面を横断していて鮮やかである。肘掛に掛けた腕や組んで前に突き出てる筈の脚が、存在を感じさせられる手前で、描画を終わってるところが好ましい。肩の際やなんかに、不思議な形態のせめぎあいがあり、統一空間内の人物像という整合した世界を部分的に崩している。あとは、全体がなんとなく、(やや枯れた)エロティックな、うっとりするような匂いがあって、それがとてもすきである。


しかし、気になる部分がある。脚の爪先である。画面の下フレームに拠って、つま先の先端が切れているのだ。


これは、意図的な絵画操作であり、このように切れていて良いのだと思う。ドレスの裾もフレーム下端と接するような位置にあり、椅子の脚の先端までフレームの外にはみ出しているため、結果的に、組んだ脚の先だけが画面内に納まっている事で、全体から受ける印象として、この描かれた人物がずるずる椅子からずり落ち、そのまま下までまっ逆さまに落ちていく危うさから踏みとどまっているかのようである。


こういうヘンな不安定感をギリギリで支えるような感覚を醸し出すのが、安井曽太郎の得意技であるのは良く知られているだろう。・・・まあ確かにもっさりした野暮ったさはありますがね・・・。でも「金蓉」は、安井作品の中ではやはり、相当良いのではないか?


・・・っていうかですね。それでもなんか気になるんだけど、竹橋に掛かっている「金蓉」の絵は、額縁に入っており、その額縁の内側に遮られ、足の先が隠されてしまっているようにも見える。だから「もしかしたら、額縁を外したら、爪先まで描いてあるのかもしれない。」なんて思ったりもするけどまあ、確かめるまでもなく、そんな事はなく、確実に爪先は無いだろう。でも、もしや・…もし、爪先があったらどうしよう!?とも、思うわけである。。逆に爪先があったら…それはそれで、ヘンな絵だろうなー。


ちなみにお手元のPCで「美脚」とかでイメージ検索して頂くと、いくつかの楽しい写真画像をゲットできる事と思いますが、その手の写真の評価・価値基準として、「被写体の足先がトリミングされておらず、ちゃんと爪先まで入ってること」が大きな要素としてあります。違った!!そういうのが大切な事とされる世界なのだそうです。ですから、その意味では「金蓉」はまったくハナシにならないゴミ画像です。らしいです。というか、絵画的な良さと、イメージ個物の良さとは、はっきり相反する。という事が言えると思います。まあ、イメージ個物の良さもたまには、悪く無いんですけどね!!!!