衣服について(1)


衣服を、「殻」のように思う心理は誰にでもあるのだろうか?それが自分を守ってくれる、いやそれがあるから、はじめて自分の輪郭が明確になるのだという、そういう外殻としての衣服。


例えば、…軍服はどうだろうか?三島由紀夫にとっての、ヒトラーにとっての聖なる服、軍服。その固い殻の内側に柔らかい牡蠣の肉が詰まってるという意識。


あるいは、…小学生の頃夢中になった日本サンライズ系ロボットアニメのメカニックデザインが感じさせていた印象とは何か?それは生身のパイロットを守り、攻撃能力を倍加させながらも、討たれ、被弾すれば傷つき壊れもするような、生まれて初めて体験する、外殻としての衣服のイメージではなかったか?人体を模したメカニックのフォルムが、プロセスを示しつつ別の形状へと変形するとき、元々あった手や足や頭部が、どのように格納され、折り曲げられて、消失してしまったのかを、念入りに確かめずには居られなかったあの頃の意識。


あるいは、…たとえば女性がスカートを穿いて外出するときの、その裾が風に靡く感触はどんなものだろうか?交互に踏み出す二本の足の周囲に纏わり付いている布が、周囲の視線に晒されながら、自らの体の動作に翻弄され、なびき、めくれ、絡み合うのを感じるとは、一体どのような事態なのか?この薄い布一枚がうな垂れるように垂れ下って遮蔽物となり、自分の裸身と世界とをかろうじて隔てているだけという感覚は。


あるいは、…組織に属していて、正装して、整列しているときの感覚とは何か?背筋を伸ばして呼吸をゆっくりと整え、左右の者達と同化する事。自分固有の事情や思いや感情すべてを停止させてしまって、何物かに判断や制御を丸投げして任せてしまい、常にイベントドリヴン型待機状態を維持しつつ、そのまま安らかでいる事。身に纏っている正装の、生地の滑らかな肌触りを感じつつ。。


あるいは、…そのように整列していながら、密かに裏切りの計画を立てる時の心境は如何なものか?この滑らかな優しい繋がりを感じ、安穏とした愉悦に浸りつつ、後ろめたいような官能をも微かに意識するのは。


まあ、安らかで居たい。と願うこころ自体は、ろくなもんじゃない。のでしょうけどね!