「The Byrds Play Dylan」The Byrds


Byrds Play Dylan


「It's Alright Ma (I'm Only Bleeding)」…この曲をはじめて知ったのはいつの事だったろうか?おそらく映画「イージーライダー」を観たときだろうと思う。どんなシーンでどんな風にかかっていたかは忘れたが、あの曲が流れると、映画「イージーライダー」が感じさせるある種のフレイヴァーが濃厚に漂うような思いがする。いや僕にとって映画「イージーライダー」の手触りが、「It's Alright Ma (I'm Only Bleeding)」に代替されてしまっているのかもしれない。


「It's Alright Ma (I'm Only Bleeding)」は1965年、ボブディランの傑作アルバム「Bringing It All Back Home」に収録されたもの。ボブディランの、このアルバムおよび「Highway 61 Revisited」の誕生は、ロックミュージックの歴史にとって、とてつもなく大きな出来事。つまるところロックミュージックとは、このように演奏して、このように歌えば、おおよそ問題ない。殊にヴォーカリゼイションに関しては、これより説得力のある方法を見出すことは相当難しい、と思わざるを得ない程の、強力な説得力とグルーヴを持っている。サウンドと声とメッセージは有機的に絡み合い、単純な怒りとか悲しみとか寂しさとか喜びとか愛してるとか、そういう事ではない(しかしそのどれでもあるような)熱を持った塊と化す。すさまじい圧縮度で詰め込まれた言葉の数々が、リズムの後押しで追い立てられるように性急に、かつ相当投げやりでぶっきらぼうに、しかしながら、これしかないというような確信をもって、速射砲のように放出されていく。


ボブディランがフォークロック路線に変化したというのは要するに、別に楽器とか編成の違いとかではなくて、強力にブーストさせたバックトラックにのせて、このように歌って、歌いきってしまう方法の発見ではなかったのだろうか?細かい理屈ではない、とてもシンプルだが確信に満ちた技法の発見。。


そんな超・名曲「It's Alright Ma (I'm Only Bleeding)」であるが、実は僕の場合、今まで書いてきてアレだが、本家のオリジナルバージョンより、The Byrdsのロジャーマッギンが幻想空間を酩酊するかのような12弦ギターにのせて独特の震え声で歌うカバーバージョンの方が好きなんです。なのでこちらをお勧め。っていうか「The Byrds Play Dylan」というアルバムは全編、本当に素晴らしい。The Byrdsのコーラスワークって、全然上手くないけどすごい惹かれてしまう。最近こればっか聴いてます。