初冬の朝


階段を上りプラットホームに立つと、毎朝必ず、左右どちらかに電車が止まっているので、どちらでもいいから乗り込んでドアの脇に立つ。さっき階段を上ったときの勢いがしばらくたってもなかなか抜けず、妙に体が火照っており呼吸が軽く乱れたままで胸の動悸もかすかに早い。車内に背を向け、ガラスと顔との距離が数センチくらいのところで、外を見ていると、自分の吐く息で視界が下の方から白く曇ってくる。自分が少しずつ老人に近づいているんだという事を、こういうときヤケにリアルに実感する。いつまでも呼吸が整わず息苦しくて、多少厚着してきたので体全体が熱をもって微かに汗ばんでいて、どうにも情けないような頼りないような、軽い絶望感のようなものが沸き起こってくるので、そういうときはいっそのこと、ああ、今日は会社で何かろくでもないような悪い事でも起きるといいなあとさえ思う。