「エターナルサンシャイン」


エターナルサンシャイン DTSスペシャル・エディション [DVD]


今年話題になった映画だという事をどこかで聞いて借りてきた。(間違い。後で確認したら借りようとしてたのは「リトル・ミス・サンシャイン」というタイトルだった。)でもまあこの「エターナル・サンシャイン」を観れて良かった。とりあえず「うおー面白いねえ」と思った。何の前知識もなく(というか忘れていて)観たので、冒頭の砂浜のシーンあたりで、わざとぶっきらぼうにしたようなカットの繋がりとか、ああー現代の映画っていう雰囲気だなあとか思いながら観ていたら、その後いきなりああなってしまうのでびっくりした。


…ただしなんというか僕にとって苦手なタイプの、まあ例えるなら「インランド・エンパイア」的な、皆が薄々とわかっているのに普段気にせず生きているような部類の事をイメージではっきり思い起こさせるような感じの映画で、たとえば氷に横たわったケイトウィンスレッドがすーーっとそのまま暗闇の中を遠ざかって行ったり、肩を叩いて相手を振り替えさせるけど何度やっても後姿であるとか、ああいう一部のシーン(というかイメージ)は僕は個人的に極度にうなされる程の恐怖を感じる。というかああいう事をされると、僕なんかはもう映画を観る事で感じる恋愛だの喜びだのといった感情レベルの動きが十全に機能しなくなってしまうというか…。そういえば「インランド・エンパイア」でも、痴呆的・ヤケ糞的に健全で元気な「ロコモーション」で踊るところで、あの登場人物がスパッ!!と全部消えるという、これまた最悪に気持ちの悪いシーンがあったが、ああいうイメージを一度でも見せられるともう何も信用できなくなるというか、その後の大円団的な唄って踊るエンディングも、やはりさっきみたいに全てがスパッ!!と全部消えるんじゃないかという悪い予感から抜け出せず、本当に映画館が明るくなるまで全く油断できない気分でいたのを思い出す。


まあ「エターナル・サンシャイン」でグジャグジャするのは全体の一部だけなので観てるこっちはあまりディープな気分にはならずに済むのだが。例えば整形手術するかしないかと同じ逡巡を「記憶」に移し変えたようなもので、性格にもよるのだろうがこんな記憶消去サービスがもし本当にあったら平然と月に一度利用するようなヤツもいる事だろう。で、記憶を消去する業者(博士とスタッフ)の方も、物語中しっかりと安定した地平で仕事をしているので、観てるこっちはそれだけでもさらに安心できる。というか、彼らの仕事のやり方はIT業界のbatch系業務なSEの人々なんかとあんまり変わらないようで、一発流せばそれを朝まで処理させといてその間はだらしなく遊んでるとかトラブルが起きるとあわてふためくとかそういう勤務態度も含めて。(僕が個人的にそういう経験がある、という意味ではないので念のため)。


映画でみえる限り「思い出の品々」をインプットして、それにまつわる条件付け検索して引っ掛かってきた対象を片っ端から削除するようなやり方に感じられて、あれだと残存物がものすごく残るとか余計なものまで削除しちゃうとか絶対ありそう。副作用は避けられないと思う。多分けっこういい加減なシステムだと思う。実際、汚いかたちでインストールされたソフトウェアとか本当に削除するの厄介なので、もし現実に人の記憶を対象にやるなら、いくらなんでもそう簡単にはいかないだろう。