「中学生日記」


中学生日記 [DVD]


山下敦弘作品のDVDを購入して鑑賞。死ぬほど笑う。どう見ても大人の男女役者が、中学校の教室で、中学一年生っぽい感じの芝居をしていて、中一っぽい小ネタをいっぱい披露して、それらがあまりにも「リアル」だから笑えるのか?そういうエピソードとかノリとかが、自分にたくさん思い当たるふしがあるから笑えるのか?こういうのあったあった!いう言葉が後から後から出てくるから笑えるのか?しかしそれではこの面白さは説明できないのだ。


テレビに出ているお笑い芸人の芸を見てると、芸の面白さって、所謂しゃべくりのパワーとかスピードとかネタの後半の展開とか畳みかけられる話芸の醸し出す雰囲気とかの良さもあるだろうけど、それと共に芸人の個性に密着した演技力の質も大きな要素だろうと思う。顔の表情とかちょっとした相槌とか、笑わされるとともに、すごく芝居が上手いなあと思わされる事も多い。でもそういう演技力というのは、たとえばこの映画にあらわれている驚くべき瞬間の、演技の質とはあきらかに異なる。どちらも、あるイメージにどれだけ厳密に近づけるか?の挑戦なのだけれど、しかしこの「中学生日記」という映画を観る面白さというのは、そういう役者個人の芝居の上手さとは別の場所から出ているとしか思えない。(もちろんどの役者もとてつもなく素晴らしいのだが!!)


ここでの役者たちの芝居の面白さとか「演技力」とかは、そういうお笑い的な、芸の細かさとか芝居の精巧な上手さ、とか、そういうのとは微妙に違う何かなのだと思う。すべての登場人物の、そこで試されている演技は、期待されている、ある瞬間に奉仕する目的に全然忠実ではない感じがある。しかしそれをおおらかな、映画というものの中であえて観てみたら、大雑把に面白さとしてすくうことが出来てしまった、とでも言いたくなるような感触なのだ。。


いや僕は実をいうと、本作をそんなには「無茶苦茶笑えます」とは思わない。いやすごく笑うんだけど、どっちかっていうとネタ一発にどかーん!と笑うよりは、笑いつつも驚愕して、あとで二回も三回も観直して、さっきの面白さが何だったのか一々確認したくなるような、そういう典型的な映画で、いや笑ってしまった隙に見逃したたくさんの要素が気になってしまうというか、とにかく出てくる登場人物たちの一人一人の喋りや表情をひとつ残らずくまなく観たくなるような空気に感染してしまうというか、とくにやっぱどいつもこいつも「顔の表情」がほんとうにすごい。パーフェクトな中学生顔がいっぱい出てくる事に感動する。スペルマって何?野菜の名前?サッカー選手だっけ?とか言って盛り上がってる女子の声を聞いてるアイツの顔とか、たぶん明日とか絶対、思い出し笑いしてしまいそうだ。


特にすべての女子たちの振る舞いが本当に素晴らしい。男子はまあ、ふつうだ。っていうか、中学生男子と、今の社会人男性ってさほど違わないんじゃないか?とすら思った(泣)。やっぱ男からみて、男子ってもう判ってる気になれる生き物なのだけれど、女子っていうのは常に神秘的なのだ。少なくとも僕にとっては(笑)…いや普通に、この映画の女子たちの姿って食い入るように観てしまう。。っていうか、この役者さんたち本当に全員、中学一年の女子にしか見えない。