高架下から土手に上り川沿いへと下る


上空には、高架に支えられた高速道路が、巨大な円弧を描きつつ、はるか彼方まで延びているので、日差しが遮られてあたりは薄暗く、埃と排気ガス光化学スモッグが混ざり合ったような薄暗い灰色に何もかも染まっているようで、やがて横断歩道に差し掛かったので歩行者用信号の押しボタンを押す。ずいぶん長いこと待っていて、やがて本当に信号が青になって自動車の流れが止まったので、車重を受け止め続けているアスファルトのゆがみを足裏に感じつつ、車道を横断する。


そのまま、目の前に覆いかぶさるかのような土手の急斜面に設えられた階段を上り、土手の頂上に立つ。車道からだと見上げる位置にあった土手中腹にあるホームレスの住居が、ここからだと見下ろせる位置になる。さらに、さっきまで自分が歩いていた車道沿いにまで目をやると、それは思ったよりも遥かに下にあるし、頭上を威圧的に塞いでいた高速道路は、多少好ましい距離感に遠ざかり、自分の視界の空が占める一帯を左から右へとつなぐような位置にある。


振り返った姿勢を元に戻して今度は川の方角を見ると、自分が立つ土手の反対側の下り斜面は枯れ芝生が西日を浴びており、川辺には背の高い枯れ草が荒々しく朽ちており、一部には黒く湿った石と苔と泥が剥きだされ、しかしやがてそのまますべてがまっ平らな水面へと呑み込まれていき、水面は光の反射をたたえつつ、向こう岸までつづく。川幅は広く、水量は多く、流れはゆるやかである。


土手は川に沿ってずいぶん遠くまで続いているので、そのまま姿勢を川の流れと反対の方向に向けて歩き出す。左右を見ながら、道沿いに歩く。少し行くと、左手に下り斜面の階段があったので、そこを下りて少しだけ川岸に近づく。自分の高度が下がって、左手には背の高い雑草が生い茂っていて、ここからでは却って近づいたはずの川面の様子は見えない。逆に右手を見て、さっきまで居た土手の頂上と、さらにその向こうの景色を見上げる。すると、今度は土手の中腹が、西日を浴びた枯れ芝生の黄緑色をたたえつつ、川の流れであるかのように、自分の視界の中程を左から右へと横断するような位置にあって占領していた。さらにその向こうにはさきほどと同じように高速道路が左から右へと折り重なっている。この、視界の中程から上位にかけて、強い圧迫感を伴って占有するイメージのあらわれ方がドナルド・ジャッドのような感じを思わせた。