雨は小降りだったが、傘を閉じて歩くにはまだちょっと早くて、実際に傘を閉じて歩いたら、コートの表面がかなり濡れてしまって、自分の前髪や頭頂部あたりも、相当濡れていたので、仕方なくもういちど傘を挿した。傘を挿せば、濡れずに済む。でも雨が小降りなので、律儀に傘を挿さなくても、これくらいの雨なら濡れても良いと思うのだが、でも傘無しだと思いのほか濡れるのはもうわかっているので、とりあえず歩きながらしだいに腕の位置を高くして、自分の肘が顔の横にくるくらいまで傘を高く持ち上げてみる。すると、それでもまあまあ、傘は傘の役割を担ってくれるが、でもやはり、傘と自分との距離が遠い分、けっこう雨があたって、顔に細かな飛沫が着弾するのを感じた。というか、まるで傘を風に乗せて飛行機とか凧みたいに空中に飛ばそうとしているかのような錯覚をおぼえた。というか、傘自体は、高く掲げられたので、風の抵抗を受けながら、ぎこちないしぐさで、かろうじて風に乗っかろうとしているのが、柄をもつ手の感触から伝わってきた。でも結局、その腕の高さはそのままに、傘の角度だけ、少し前に向けて、進行方向からこちらに向かってくる雨をなるべく遠くで遮断するような気持ちで傘を構えてみた。傘が風に乗ろうとする意志は認めない事となってしまったが、雨を避けるための方法としては、その状態だとさっきよりはずいぶんマシかもしれなかったが、でもすごく良いと言うほどでもなく、結局この場この状況において、もっとも良いと感じられるようなポジションは見つけられないまま普通に傘を挿して帰宅。