朝の通勤時間帯の、中目黒方面の日比谷線に乗る。霞ヶ関でどっと降りて、さらに神谷町、六本木を過ぎたあたりでようやく車内のところどころに隙間ができ、座席も空き始める。次の広尾に着くと大方の乗客は降りてしまい、一車両内に人が三十人くらいまで減る。次の恵比寿でさらに減って十人かそこら、少ないと一桁台にまで減る。で、次が終点の中目黒で、駅に着く前に地下から地上に出るので、外の光で車内がぱーっと明るくなって、数少ない乗客を窓越しの直射日光が、フラッシュを炊いたみたいに、ばたばたと明滅しながら照らすので、寝てるおやじとかはうるさそうに目を開けて顔をしかめ、朝帰りのホステスは濁ったような目でぼーっと虚空を見つめている。電車が終点に来て止まって、向かいのホームに東横線みなとみらい線直通の、元町中華街行きが来るのだけど、通勤客はほぼ全員、通勤急行か急行に乗る。近場に朝帰りの人とか、時間を気にしてない人は各駅に乗る。で、僕も通勤なんだけど基本は各駅に乗って、ゆっくり40分近くかけてみなとみらいまで行く。急行とかは着くのは早いけど混んでるし、早めに出てるので早く着いてもしょうがないし、本が読みたいので、人の少ない電車でなるべくゆっくり読みたいから、いつも各駅に乗っている。寝てしまわないように、がら空きの車内でいつも立っている。でもくたびれてくると、座ることもあるのだが、そうすると座って数秒で見事に寝てしまう。本を開いて、行を追いかけ、文字を反芻している格好のまま、電池が切れたみたいに寝てしまっていて、降りる駅の直前ではっとして起きて、ぼーっとした意識の中で、向かいに座ってこっちを見てる人としばらく見つめあったりして、ふいに正気に戻って、うわぁ降りなきゃと思って慌てて鞄やら本やらハンカチやらを両手で抑えてあたふたと下車する。歩きながら今日読み終えたところ(中目黒から先少しして寝入る直前のところ)に栞を挟みなおす。でも次にはいつも、そこから読むわけではなくて、一ページくらい戻ってから、あらためて流れを思い出すように読み直し始める。