ほどける


 こうしていると、すぐに眠くなってしまうな。

 人間というのは、どんなに大変なときでも、どんなに心配事があるときでも、どうしたっていつかは寝てしまうものだ。

 なんとなくだけど、人間が起きてるときと、寝てるときでは、本当に同じ人間なのかな?

 起きてるときは、色々なことが絡み合っているようなものだ。今日なんか、一日中モニターの前で、じっと大人しくしてただけなのに、それでも起きていると、相当いろいろなことが絡まりあう。

 逆に言うと、絡まりあっているあいだが、起きている時間なのかもしれない。絡まりあっているのを、ほどいているというのが、起きているということ。

 でも自分がほどいているという意識はあまりない。いつか、気付かないうちに、自然にほどけている。少しずつ、ゆるみが生じてくる。固く結ばれていた箇所が、お湯にとけるように、その内わけをあらわにし始める。このままいったら、ほどけそうだという感じがでてくる。

 そうなると眠くなってきて、いつの間にか、意識をうしなう。寝ているときは、ほどけている。起きると、また元に戻るのだが。

 起きて、絡まっているのを、ほどこうとする。いつものように、上や下から見たり、指先に力を込めてみたりする。それでまた一日である。

 もし、ほどこうとしなければどうか。そのままで気にしなければ、ずっと起きていられるということか、あるいは、ずっと寝てしまうということか。

 どっちなんでしょう?どっちなんでしょうね?どう思いますか?

 興味がなさそうですね。そろそろつまんなくなってきました。眠くなってきましたね。

 今日は、電車の中で本を読んでいたら、ついうとうとして、手に持っていた本が床に落ちて、あ!おっといけねえと思って、屈んで拾いましたよ。