For Alto


 レコード屋の棚を見てたらAnthony Braxtonの「For Alto」という二枚組のLPを見つけたので買った。900円。大昔に、何かのジャズアルバムのバイヤーズガイドみたいな本に載っていたのをまだ憶えていて、でも実際に売ってるのは今日はじめて見た(と思ったらamazonでは普通にCDも手に入るみたいだけど)。それにしても、とくに、これを聴きたくて今まで探していたとか、そういうわけでもなくて、むしろ全然忘れていて、Anthony Braxtonの参加しているレコードなんて(circleとか)数枚しか持ってないし、それらもここ十年以上ほぼ全く聴いてないのに、よくこのアルバムの事をおぼえていたものだ。ジャケット見て、あ、これは。とすぐわかったのが不思議。

 そして取り合えず今A面から聴き始めたところだが、とりあえずこれは素晴らしい。傑作と呼んで差し支えない。それまで僕が知っていたAnthony Braxtonの音のイメージの通りだと、ひとまずは言えるのだが、でもその上で、とんでもなく幅広くて豊かな表現力に支えられた、みずみずしい音がむき出しで溢れ、こぼれ、はじけ、ほとばしっている感じだ。延々、アルトサックスのフリーなソロ・インプロヴィゼーションが続く内容だが、素晴らしい色彩と質感の流れ。まるで、いまここで目の前に降る雨の音を聴いているようだ。雨の音の、外の空気や大気の動きや匂いなども含まれたまま、異様に表情豊かに聴こえてくる、そういうときの、場の感じを感じている瞬間に似ている。

 そして今、二曲目。たぶん、これはすごくいい。

 そしてA面終わった。B面スタート。おどろく。これはさらにすごい。このアルバムは全部聴かないと、今の時点では、全貌はまったくわからない。