最初から最後まで、しっかりと雨が、決して止まないような勢いの、本気で降っていて、じつに頼もしい。しかし、ふと気付くと、意外と止んでいる瞬間もあって、それがまた、たまたま嬉しい。さっさと、そそくさと小走りで帰る。でもまた、見上げるやいなや、またすぐ降り始める。こまかく、霧雨状になって、水滴の粒が、上下に舞って、顔や手にべたべたと貼り付いて、傘の表や裏を満遍なく濡らして、結局は、このまま濡れて帰ろうと思う。

 朝の雨のなか、玄関のドアを開けて歩き始めると、景色全体が、一様なグレーの色彩に染まる。ベタ塗りの一様な空間のなかの何箇所かに、いくつか、鮮やかな青白さで、紫陽花の花が、宙に浮かんでいるのが見える。

 今、窓を開けていると、かなりいい風が入ってくる。雨の成分も入ってくる。部屋の外と中とが交じり合う。 水が、水が、と思いながら、酒が酒がと注ぐ。しかし今となってはもう、時間が如何にも中途半端で、湿潤の遊びにも、制限時間が。もう寝なければ。