ものすごく、ばかな顔をしていて、あれでまともな人間とは、とても思えない。しかし、話してみると、まともな人間だった。いや、まとも、それどころか、大変優秀で、ちょっと類を見ないほどのパフォーマンスを示す人物だった。しかし、そのことを知ってからも、いつどのような情況で見ても、やはりものすごく、ばかな顔をしている。そうとしか思えない。まさに、いつ見てもそうだ。ほとんど、人間らしさとか、考えとかたくらみとか、そういった、人としての内面そのものが、あの顔の内側に、存在するようにはとても思えない。頭部ぜんたいが、空気で膨らませて、中は空洞のような、そういう表情にみえる。表情? …いや、厳密には表情ではなく、顔でもなく、そういうものに見えるだけの、ゴムでできた、人形の目と鼻と口の、それらの配置。というだけだ。だから、ばかな顔、ということでもなくてもっと不気味な気味の悪い、ことなのかもしれない。だがしかし、再度あらためて見てみても、くどいようだが、やはりじつにばかな顔なのだ。そうとしか言えない。首をひねって、よそ見をしている姿を見ても、虚脱感をおぼえるほどに、ばかな感じがする。首がちょっとひねりすぎで、ほとんど頭が変なふうに付いている感じがする。見てるとほんとうに、全身のちからが抜ける。