チョコレートをたまに食べると、本当に美味い。ううーーと、唸り声が出るほど美味い。あの香りは、いったい何ですか。ほとんど、危険な食べ物。そうたくさんは食べられないような、嗜好品に近いような味。


寿司も、酢と海苔の交じり合った香りを嗅ぐと、ああ、これはと、無意識に思っているようなものだ。海苔。この食材のおどろくべき芳香。寿司屋の香りとは、海苔の香りのことだろうと思う。なぜあれほどの、身体を真っ直ぐにしたくなるような香ばしさがたつのか、じつに不思議だ。結局寿司は海苔に尽きるのではないか。


今日、原始時代へタイムスリップしたとき、ポケットにはライターが一つ入っていた。人々の前で、僕はライターで火を起こし、その場で海苔を炙って、素晴らしい香りを周囲に撒き散らし、そのあと握り寿司をお任せで人数分ふるまった。そのあとはカカオを手際よく燻して、香りを楽しみながら、燻された豆をすり潰して、調達できた食材で味を整えた。皆が喜んだので、味をしめて、今後の歴史的な事件や出来事を予言するような発言を繰り返したが、予想に反して、人々の興味を惹くことはほとんどできなかった。