ジン


はじめてジンを飲んだのは大学生の頃だが、当事はまったくそれを美味いとは思わなかった。まず思い浮かべたのは油絵具のテレピン油である。こんなものが美味いだなんてそんな人の気が知れないと思ったものだが、今やあの香りとドライな味わいに抗しがたい魅力を感じている。調べたら香りの元になるのはセイヨウネズという樹木でこれはヒノキ科であり、テレピンはマツ科の松だからずいぶん違うけれども、さわやかでドライな香りに共通するところも感じる。ジンはワインや日本酒と違って食物無しでそれだけを飲む、オリーブを齧りながら、というシンプルさもいいし、味わいと香りに対してあやふやであったり曖昧であったりするような態度を取らないで、なるべくきちんと感じ取ろうと身体が臨む感じもいい。一口飲むと全身の血管がふわっと広がり細胞がかすかに喜びで震えるような感じもいい。バーで過ごすとか今までほとんど興味なかったけど、最近はとても好きになってきた。