今飲んでるこの酒の銘柄が何なのか、飲んだだけではわからないのだけど、しかしこの味わいは昔から好きだ、大衆的で安価で、昔からあって、今でもコンビニやスーパーで購入可能、立ち飲み屋とか屋台の明かりがもたらしてくれる安堵感と同等の何かを感じさせるこの変わらなさが好きだ、というよりも、カップラーメンやレトルト食品のように昔から知ってるという感じだ、学生の頃は、こればかり飲んでいた、当時はこれしかなかったというか、どうせどの銘柄であろうと、全部同じ味わいにしか思えないから、注文のときは、どの名前を言いたいかだけで決めていた、たぶんあのとき、それを飲んで本気で美味いとは、思ってなかった気がするのだが、今となっては、あの香りをひたすら嗅ぎ続けたことが、記憶にしっかりと浸み込んだ、それは良かった、古い磁気テープに、かろうじて当時の音声が録音されていた、それをたまたま再生できてしまえることの驚きようなものだ、その香りと味わいがそのまま、特定の過去につながってる数少ない記憶の一つという感じが今はする、とくに理由はないけど、なぜか残された写真や記録が極端に少ないある一時期というのはままあるが、ちょうどそんな時期に重なるのが、その味というところもある。