一昨日の、そういえば絵を描くのも久しぶりだったけど、やはりあれだけ集中するのも、最近はあまり経験に無いことだ。集中するというのは、つまり緊張するということでもあり、それだけ不安を感じていて、失敗にビビッてもいて、ほんの一瞬のなかに、細かい失望と急速な立ち直りをくりかえしていて、とにかく何時間かのあいだ、やたらと目まぐるしいものだ。人間、何十年か生きてしまうと、もうある程度予測がつくので、どんなに力んでも無駄なものは無駄なので、最初からあきらめもつくのが普通なのだけれど、おもしろいことに、絵の場合は、意外と僕はあきらめが悪いらしい。ただ、ことわっておくと、僕は自分が絵をマトモに描けるとは、いまやまったく思ってなくて、むしろもうほぼ、あきらめていて、なぜかと言うとそれはもう、自分の手が描くものが、もういくらやってもロクなことをしないからだが、それでもなぜか、久々に描くと、まるで物乞いする幼児の如く、けなげなほど侘しく緊張しながら絵に向かっている自分がいるのだから、なんとも笑えるというか、かわいそうというか、ちょっと行って抱きしめてあげたくなるというか、そんな何とも切ない感じである。でも、まだそれだけ好きな気持ちが残ってるってことかもしれないわね、みたいな、スナックでカウンター越しにママさんに言われて、馬鹿言うな、そんなんじゃないぜ、と躍起になって否定みたいな、そういう感じの、まさに腐れ縁の感じがすごい。絵は…昔はさすがに、二十代の頃とかは、人並みに、それなりに思いつめたりもしたけど、でも、まあ、どうなんでしょうね。こればっかりは、人間一人の意志ではどうしようもないことなんじゃないでしょうかね。