「他の人たちどこかにいますかね?」
「知らない。誰も見てないよ。君はなんで知らないの?」
「さっき見かけませんでしたかね?」
「質問が僕がしてるんだよ、君に聴かれても僕は困るよ。」
「あー、はい。すいません。」
「僕は今日は何もわからずここにいるからね。」
「あー、はい。」
「君が今日の主役だろ?」
「いや、そうではないと思います。」
「とにかく君も、勤め人やってるなら、遠慮なく会社の金でがんがんやりなさいよ。」
「はい。」
「むしろ、そうすべきなんだよ。」
「そうなんですか。」
「例えばこうして、今この場で、君がこの僕と喋ってるのだって、会社にとっては有益だって、あなたがそう言って持ち帰りなさいってことだよ。」
「はい。」
「たとえばこれだってね?このボトル一本で換算したって、こんなのは、はしたがねですよ。だけど、それでもあなたが自分の財布から出してたって何の意味もないでしょ?自分で金払って自分で飲み食いして、それが何なの?そうじゃないでしょ?あちらさんとこちらさんを繋げて、それでわいわいで、万事オーライなわけじゃない。」
「でも部長。じつは僕。今日のことは始めから、詳細を全然聞いてないのですが。」
「いやいやいや、私も今日は、悪いけど何もわかってないですからね。」
「そうなんですか。」
「私は今日の趣旨も、この後の流れも、まったく聞いてないし、このあともなんにもできないからね。あなた今日は頼むよ。」
「わかりました。ちょっとここにいて下さい。」
「うん。いいよ、いいよ。ずっといるよ、君がそう言うんなら。」
「すぐ戻りますから。」
「うん。わかった。今日は君が僕の上司だから。たまにはいいだろ。事業継続計画のひとつだな。」
「部長すいません。前に何歩か、移動した方がいいです。後ろ邪魔です。後ろの席の邪魔になってます。」
「…おおー!これは…!すいません。大変失礼いたしました。いや、申し訳ないな。気付きませんで、大変失礼いたしました。汚れませんでしたか。大丈夫ですか。」