相手先

長らく連絡していなかった相手先に電話した。
「すいません、お待ちいただいてる件ですが…」と告げる。
「…はい」と明らかに警戒した声で相手が応える。
「ええと、振込先の口座がですねえ、僕の住む地域からは振込みできないんですね。」
「はあ、そうですか・・・」
「そこでご相談なんですが…、ええと、たとえば郵便局の口座とか、お持ちでないですかね?」
「え?郵便局ですか?」
「そう、もし口座をお持ちならね、そこからお支払いできるかなって、思ってるんですけど」
「ああ!なるほど、そうですか、わかりました、すいません、今ちょっと、社長出かけてまして留守なんですわ!もう少しで帰ってきますでね、すいませんけど社長に聞いて、もう一回ご連絡させてもらいますわ、それでよろしいですか?」
突然の、嬉しそうな声。
「ええ、はあ、ええ、もちろんです、かまいません、お手数かけますが。」
「それではまた連絡します、はい、ごめんください、すいません失礼します・・・」

しばらくして、相手先の社長から折り返しの電話があり、用件を繰り返した。社長は終始ふつうの声色だった。なんだ、さっきの人みたいに、もっと嬉しそうな声出せばいいのにと内心思う。しかし、そんな自分てほんとうにいやらしい性格してるなあと思う。そもそもこちらがもっと恐縮すべきかもなあとも思う。