もう一台、自転車を買ったら、二人で自転車で出かけられるのでは?
いやいやいや、今ある自転車だって相当ぼろいから、もし自分も自転車を買うなら、そのボロさにあわせた中古品を買いたくなって、ぼろいのが二台になるでしょ?
それだと結局、二人で自転車に乗っても、せいぜい亀有のソバ屋くらいまでしか行けないだろうけど。
でもあんな店に、私は行かないし。
そもそも、今の自転車はサドルの高さも自分に合わせてしまったので、もう自分の専用車になってしまった感じだし、買うならお前が、その新しい自転車に、乗れば良いのでは?
どっちにしろ、そう遠くへは行かないだろうし。それにしても、やっと桜の葉が赤くなってきた。向こうの木はきれいになってきた。
赤くなる前に散りそうだ。それにしても、こういう広場に来ると必ず、子供が親とボールで遊んでいて、ほら、なぜいつでもこうして、我々が歩いていると、子供の蹴ったり投げたりしたボールが、いつも計ったかのようにこちらに向けて転がってくるのかね?
ボールを、吸い寄せる力があるのかしら?
それを最近はもう、笑顔で手を振って投げ返してあげたり、蹴り返してあげたりとか、もう一切しないから。えー?それ、無視しますか??っていう視線を、平然と受け流しながら、転がっていくボールを見過ごしながら、すたすたと歩いていくからね。
どうせ投げ返してあげても、どこか、全然あさっての方向に飛んでいくし。
子供って、もう最近は、最初からわざと、こちらに向けてボールを向けてるのが、感じられるね。ヘンなコミュニケーションのお試し、みたいに。いかにもたまたまボールがそっちへ行きましたみたいな感じで、ちょっと、そのボール取ってよ、みたいな、たかだか四歳か五歳くらいの分際でさ。図々しいというか、実にいやらしい。
自分が昔、そうだったからでしょ。
そういう子供特有の、計算高い、いやーな感じの、餓鬼特有の狡猾さだね。向こうがそれで攻めてくるなら、こっちも中年特有の狭量さで攻め返すと。
絶対に負けることがわかっている戦いを自ら選ぶと。
自分との戦いだな。
お酒との戦いですね。