美容院で髪を洗ってもらうときの、あの気持ちよさ。いい香りに包まれているのが快適なのか、しっかりと念入りに頭皮をマッサージしてくれる、他人のやや力のこもった指先の感触が快適なのか、そうやって人に身を預けて、自分の身の回りのことをお任せしていること自体が快適なのか。とにかく身体の力を抜いて、終始虚脱状態でいるだけで済んでいるのがいい。

美容師の人と会話してるとき、ほぼ実の無い話ばかりするわけだけど、施術を受けながら、どうでもいい言葉を転がしているとき、頭のなかに、その言葉が小さな塊になって、ころころと転がってるような感覚に見舞われることがある。そうだ、これとこれを、順序も適当に、次と次で投げておけばいい…などと言うと、相手に失礼だが、しかし気分としては良くも悪くも、まるで身が入ってなくて、ほとんど上の空の感があって、そんなリラックス状態で出てくる言葉は、言葉の薄い膜だけで中身は空気だけみたいなものだ。