皆さん


帰りの山手線のなかで、女の子たち五人くらいがきゃーきゃー楽しそうに話しているのを聴いていた。中国語っぽい会話で、たぶん皆アジア系外国人である。たまに日本語というか、日本語の固有名詞が混じる。たぶん学校の話をしている。駅に停車するたびに、一人降り、また一人降りして、どんどん少なくなる。そのたびに、皆の扱う言葉が変わる。日本語の会話になっていた。たどたどしいけど、けっこう上手だ。いや、とても上手だ。すごいな、大したものだな、どのくらい滞在すれば、これほど外国語を話せるのかしら。ほんとうにすごい。僕なんか、日本に住んでいて日本語しかわからなくて、ほんとうに恥ずかしい。君たちはほんとうにすごい。なにしろ、なんだか皆楽しそうだ。聴いてるだけで、何を言ってるのかわからないが、わかるところもあるけど全体的にはわからないが、わかろうとしているわけでは、ないのかもしれないが、とにかくなにしろ、みんな、楽しそうで、とてもいい感じで、僕はずっとそのやりとりを聴いていた。巣鴨あたりでまた一人が降りたら、残り二人になって、その二人は英語で話し始めた。たぶん簡単な言葉のやりとり。言葉のぎこちなさなのか間柄のぎこちなさなのなか、でもなんか、すごく感動的。映画みたいで、ずっとこころがざわつくような思いで聴いていた。田端で二人とも降りてしまい、誰もいなくなった。仲良く並んで、ホームを歩き去る二人。皆さんお元気でね。