JUNKO ONISHI TRIO featuring GERALD CANNON & KARRIEM RIGGINS


Blue Note東京で大西順子トリオ。金曜日の夜に公演を知って、どうする?行く?行こうか、と行って、急遽行くことにした。しかし、我々夫婦はライブと言ったら、大西順子「だけ」しか行かないじゃないか。この世の中にはもっとたくさんの音楽があるのに、どうして他に対しては消極的なのかと思う。これを機にもっといろいろと食指を伸ばさないといけない。


何年ぶりかに観たステージは、あっさり始まってあっさり終わった。ゴリゴリの力押しな印象ではなく、リラックスした感じの、ゆとりの展開。どの曲も終始良かったけど「バロック」の曲がとりわけすばらしい。この演者は、ここに聴こえて来る、この、こういう音楽、このフレージング、このニュアンスを、ほんとうに心から愛していて身も心も捧げた人の、そういう演奏ですね、というのをあらためて感じた。たとえば60年代のミンガスのような、音楽であると同時に演劇的でもありチンドン屋的でもありコラージュ的でもあり胡散臭いコケ脅し的催事でもあるような、さまざまな要素が矢継ぎ早に組み合わされてごった煮的に一曲に乗っかっていく中で、この重さ、複雑さ、混濁、分裂、の混ざり合いの、ちょっとやそっとでは、わかった気にさせないような、楽曲の重厚な凄み。そういう音楽全体にスケールの大きさがあって堂々としていて、以前だったらガッツンガッツンと盛り上げて行きそうなところも、そうではなく目まぐるしく転調する楽曲構成として聴かせ、より複雑な次元の音楽として響かせていくような感じ。とはいえ、全編緊張につつまれた演奏というわけでもなく、単純に楽しいジャズ全開で、終始ノリノリで、血湧き肉踊る感じで、面白かった。