プロペラ機


高校一年生の男子らしい。脇腹を厚さ二ミリの鋼板が覆っていて、頭部に付いたプロペラが回るので前進する。停まりたいと思っても、それはそれなりに一苦労らしい。時速十キロくらいで、遠めに見る限りは、低空滑空のように移動している。芝生をずるずると、爪先が擦っている。空から紐で引きずられるように、進んでいる。あのまま、駅の改札をどうやって抜けるのかと思って見ていた。駅に着いて、こともなげにICカードをタッチして構内へ入った。こういうのって、思っているよりも全然普通のことなんだなと今更のように思った。ホームへの階段もずるずると、ヒモに引っ張られるようにして、両足をだらっとのばしたまま、つま先を階段にばたばたと当てながら昇って行く。壊れるところを見たいものだが、機械って、その瞬間が見たいと思うと、不思議なくらい、なかなか壊れないんだよね。