暗い景色


午前中は日の光が窓から降り注いできて眩しくてテレビの画面も見えないほどだったのに、午後から日が翳って出掛ける頃には薄暗く空の色は重い銀色に変わっている。図書館に行く途中、曇り空の下、荒川沿いの土手を歩いていると川の向こうのビルや住宅地が思いのほかよくみえる。冬のこの時期特有の、空気中に水分が少ないだろうから普通なら見えないはずのビルの建物の輪郭や細かい部分の表情まで不思議なほどくっきりと、まるでめがねをかけたときのような景色になっている。それは、景色の方がそのような状態になっているのか、それを見ている僕の内部においてそのように見えているだけなのかというところだが、なにしろ今の季節はまさにこうだなと思いながら歩く。…図書館を出たあと、食材などを買って帰宅。家に着く頃には真っ暗になっていたが、時刻はまだ五時ちょうどだ。五時が、この暗さか!とあらためて驚く。確かに空はまだかすかに光を残す部分もあるが、どう見てもこれはもう夜と呼んでさしつかえない。でも一日通して、あまり寒くはない。これでも十二月か。しかしこの暗さ。これはもう暗すぎて景色とは言えないと思うのだが、しかし見ている何かではある。これも毎年の、この季節特有の何かである。