Odd


以前から薄々感じてはいたのだが、たまたまCS放送で見たり、菊地成孔のラジオで聴いたりして、韓流アイドル歌謡曲のクオリティの高さにあらためて驚いている。


今は、SHINeeのアルバム「Odd」を一途に聴いているだけなのだが、これは本当に素晴らしい。何が素晴らしいのかというと、要するに90年代R&Bが鮮烈なまでに甦っていることが素晴らしいというだけのことなのだが、でもこれはもう、聴いていると失われた青春の日々がすべて目の前に具現化してぼたぼたと床に落ちてくるくらい凄い。いったいなぜ、韓国でこんな、一昔前なサウンドが、これほどまでの密度と精度でクリエイトされているのか。というかじつは結局、R&Bの良さってじつはここにしか無いんじゃないか。そんなの誰もがすでにわかっていて、今、韓国の若い子が極度にメロウでスウィートな歌唱を真似して、ファンがきゃーきゃー言って、そんなふうにして普通にそこに、R&Bがある、というだけのことなのか。だったら、別に何の問題もなかった。ああ良かった、みたいな気分だ。


実際、SHINeeはソウルっぽいかと言えば、まったくそんなことは無くて、すごく上手だしファルセットもキレイだけど、良くも悪くも今風で小奇麗で、何の破綻もなくてあまりにも淡白なので、ソウルとしては聴けないのだが、それでも"Love Sick"、"View"、"Romance"とつながる前半部分の、その勢いだけで文句のつけようが無いし、スローなら"Farewell Of Love"、後半アッパーな"Black hole"など、佳曲が全体にバランスよく散りばめられていて、アルバムとして実に完成度高く素敵だ。個人的にはRepackage版の「Married To The Music」になるとガクンと質が落ちるように感じてしまう。ほとんどの曲がかぶっていて、曲の追加されているだけだから印象もそんなに変わらなくてもおかしくないのに、そうではない。つまり「Odd」の完成度が良すぎるのだ。(追記:それは言い過ぎ。4曲追加されてるだけでほぼ一緒の内容です。)ましてや日本語verを多く収録した「D×D×D」になると、かなり残念な感じになってしまう。僕の大事なSHINeeが、軽はずみにこんな企画盤なんか出さないでほしいと言いたくなる。なんか不思議なことに、韓流ソングの言葉のわからなさというのは、ある種、わからないからかえっていいのだ、という感じがある。