泳いでばかりの日々


水泳ばかりしている。先月末から数えて、だいたい二日に一回くらいの頻度で泳いでいる。クロールで、約三十分かけて1000メートルを目安に、基本は休みなく、一度泳ぎ始めたら途中でとまらずに25メートルのプールを二十往復する。泳いでいる間は、今何メートルか、次のターンで何メートルかを、数えている。頭の中は、ほぼそれだけである。最近は、その距離にいささか身体が慣れてきてしまっており、1000メートルに費やされる時間がかなり少なくなってきているため、そのぶん泳距離もさらに伸びている。


先々週くらいから、misfit shineを腕に付けたので、それが勝手に泳距離を計測してくれている。後でiPhone内に同期させると、本日の結果が登録される。便利なんだけど、ひとつ盲点というか、期待はずれだったのが、せっかく計測してくれても、泳いでいる間はそれを確認するすべがないということ。すなわち泳いでいる間は今までどおり、自分の頭の中で今何メートルかを数え続けないといけない。その場で今何メートルです、と表示してくれないのだ。まあ、表示してくれたとしても、泳ぎながらそれをどうやって見るのか?というところもあるので、まあしょうがない。


こうしてある期間、集中的に泳ぐというのを、三、四年前にもやったことがある。あのときも健康診断で色々と悪くて、というのは要するに僕の場合は中性脂質が多くて、血中悪玉コレステロールも多く、尿酸値もわりと高めで、要するにおまえは酒の呑みすぎ、の一言で片付く類の人間であり、外見はやせからやせすぎに該当する体つきのくせに、内部はそうでもなくて、吹きこぼれるかのように白いものが内臓まわりにいっぱい貼りついてるみたいな、いわゆる隠れ肥満体質みたいな、そんなことになったので奮起して、いよいよ来るべきときがきた、こうなったら戦争だと思い切って、週三日ペースで泳いで、食事はかなり制限して、そんな感じで始めたら、意外と二週間もしないうちに、みるみる体重が落ちて、二十代の頃の値に近づいていった。元々やせすぎな子供で、二十代の頃も五十キロ前後しかなかったのだが、三十才を過ぎて、タバコをやめて、酒量が多くなったとたんに、一気に六十キロ越えしたものを、なんとか元に戻したという感じであった。五十キロ代の前半あたりに落ち着いて、水泳はじょじょに行かなくなった。それまで毎日湯水のごとく飲んでいたビールをやめてワインにした。(そこからまた、ワインについてごちゃごちゃと細かい事を調べ始めたりもして…)それが当時の話。


あれから今でも、食べる量はそれほど増えてないし、ここ数年、健康診断の数値も悪くなくて問題ないはずだったのだが、今年の診断結果は予想以上にだめで、脂質、尿酸値、脂肪肝など色々指摘されて、原因は結局酒のせいなので、とりあえず先月末から禁酒している・・・と言いたいところだが、それは無理なのでたまには飲むが、しかし摂取量は激減しているはず。それで、食事量もさらにやや抑え目。さらに四年前と同等かそれ以上の頻度で水泳しているという状況だ。


毎日そうやっていながら、運動量の記録を眺めながら、しばしば思うのは、四年前と今と、身体がかなり違ってしまったということである。ごく単純に、四年前のように簡単に成果が出てこないところが違う。日々かなりの運動量を積み重ねているつもりだが、体重変化率が予想外に低い。四年前はもっと、日々体重計に乗るたびに値ががんがん減っていくような感じがあったが、今回はまるであてにならず頼りない。増えたいんだか減りたいんだか、はっきりしないような、やってることと全く無関係に、一キロ前後の幅を増えたり減ったりしている感じ。こんなものなのだろうか。よくわからないけれども、でも最初の段階から、ここに来てどうやら二キロは減ったみたい。そこだけはこれまでの取り組みの、気合に比してやけにつつましい純利益と見なせるみたいだ。あとは正直、前後する変動幅からどう転ぶのかよくわからない。それにしても、こんなに見返りのないことだったろうか。なんだか気の長い話で、待ちくたびれるというか、展開が悠長すぎる。いっそのこと役者が人相変えるくらいの勢いで超ヘビーコア系断食でもしてやろうかとも思うが、それはそれで目的の崩壊というか、脂質は減らしたいが痩せたいとか減量したいとかいうのとはちょっと違うので、仕方なくこの緩慢な変化を見ながら地道にやるしかないようだ。色々、あまり面白くない。面白くないから、気休めにアプリだのスマホ連動体重計だの馬鹿な小物を買いたくなるのだが、もっとさっさと結果が出れば、そんなものは本来いらない。