ダージリンセカンドフラッシュ


男性はこっちに座りなさい、女性が奥ね。荷物はここに置きなさい、と、インド人の店主に言われたとおりに着席する。やがてメニューと十軟種類もの茶葉が入ったサンプル箱を持ってきてくれて、ファーストフラッシュは時期的に一年くらい前だからやや古くてお勧めしない、セカンドの方が良いかもしれない、ほかにもいろいろあるから選びなさい、と早口で言って去っていく。まったく意味がわからないので、メニューに書かれた説明を読んだりサンプルの香りを嗅いだりいて、やはりよくわからないし、メニューからこれとこれみたいに、適当に言いなりで注文したら、キラキラに輝く銀製盆に同じく銀製のポットと茶漉し器と、扁平に近いくらいひらいた形状のティーカップが供された。こっちは40秒後に、こっちは50秒後に注ぎなさいと言うので、だいたいそのくらい待ってからカップに注いだ。まあ、紅茶だな。こちらがダージリン。こちらがアッサムのオレンジペコ。こっちは二杯目からはミルクを入れても良い。どちらかと言うとダージリンの方が爽やかで好きかもしれない。それにしても、でかいポットだ。1リットルくらい入ってるんじゃないか?カップは小さいので、注いでもわりとすぐ飲んでしまうのだが、飲んで、注ぎいれて、また飲んで、また注ぎ入れて、それを何度繰り返しても、ポットの中が一向に減ったように思えない。上蓋を取って中を見ようと思うが、ポット全体がかなり熱くて手で触れない。かなり時間が経っても熱いままで、まあこれは、腰をすえてじっくり飲むしかないな、まあ、別にすべて飲み干さなければいけないわけでもないしなと思って、でも結局、ほとんど飲みきってしまった。会計して、店を出て、しばらく腹の中が重くて体全体が紅茶に浸りきったようになっていた。もうしばらく紅茶は、飲みたくないかもしれないと思った。ちょっと体を傾けたら、口から逆流してくるかもしれなかった。紅茶に悪酔いしているかのようだった。はじめての感覚的経験だった。