閉店

あの店がついに閉店した。窓から覗くと暗くなった店内に備品などが既に取り外されて床に置かれていた。この店に僕は入ったことがなくて、通り道なので前を通り掛かるだけだったのだが、店内を覗いて、いつもヒマな店だなと思うだけだった。おそらく店舗の賃貸借契約解除が、よく知らないけど半年前とかもっと前に決めるだろうから、だとすると去年、外にあったメニューの内容が変わったとき、すでに閉店を決めていたのか。消化試合の数ヶ月、でもその間にも少ないけどカウンターで飲んでる客もいたし、たしか先週も誰かいた。客がいると、おぉ珍しいと思った。あの人はこの店が閉店直前だとは知らない、いや知っているかもしれない。僕もいつだったか別の店で「実はうち、○日で閉店なんです。」と言われたことはある。これまで二回か三回、いやもしかすると、もっとあるかもしれない。そういえばまだ若い頃、バイトしていた店も閉店した。翌日に店長と後片付けをしていたら、そのことを知らなかった常連客がやってきてその場ではじめて閉店を知り「えーー!!」と驚愕して、唖然としていた。しかし店長と僕は、そんな常連客を見るともなくただ黙々と後片付けを続けた、そんなことを思い出した。