My Life


Mary J Bligeの声は、ほとんどそのまま90年代を蘇らせる。音楽のはずが、それは音ではなくて、90年代の空気のざらつきそのものだ。しかもそれが、出来事や視覚的な記憶ではなく肌の感触として物質的に蘇って、耳でそれを受け止める。久々に聴いたら、なつかしいどころか、あまりの生々しさに、けっこうびびる。過去であるはずの慎ましさとか枯れて色褪せた感じなど、まったくない。夢で見たみたいに、今いきなりそこに20年前の続きが始まってしまう。こうなってしまうと、さすがに過去とは言えない。いつでも続きを始められる状態でずっと一時停止していた、スタンバイ状態の現在としか言えない。