アサリ


砂抜きのために塩水に浸しておいたアサリがかなり活発に水を吹くので、何時間か放置したら、そこらじゅう水浸しになってしまい、あれあれと思って拭いてる間にも、のべつまくなし水を吐いて、どいつもこいつも殻を揺すりながら、柔らかな身をほとんど全露出させるくらいの勢いでうねうねと動き続けていて、そのすごい体力におどろく。ここまで活発だと、このあとまもなく絶命させるのが忍びないような気持ちになるが…それから数時間後に、熱されたオイルの上に叩き込まれて、灼熱の盤上をがらがらと転がされて一人残らず瞬時に昇天した。しばらく蒸して、蓋を開けて、香ばしい湯気が立ち昇り、パセリが塗された。夕方の五時半頃、まだ外は明るく、よく冷えた辛口の白が注がれてグラス表面を曇らせた。アルコール度数低めの安物ソアヴェが水のようになくなる。たちまちのうちに捨て皿に貝殻がいっぱいになり空瓶が転がった。食べられてしまった後に、残ったスープがリゾットになった。食べられるときに食べておかなければと気が張っていた。やるかやられるか、明日になったら、食べられてしまうのかもしれないから。