通勤人座


通勤の人々が歩くのを見ている。ということは、僕も通勤人だ。通勤人は、通勤人の後姿を見ている。僕も通勤人の後姿を見ながら歩いているし、後ろの人から、僕の後姿が見られている。僕の歩き方の特徴を見られている。僕の歩き方には特徴があるようだ。僕の前を歩く女性の歩き方にも特徴がある。痩せている。特徴的な歩き方、そして早い。僕も歩くのは早い方だが、そう思っているのだが、前の女性は明らかに僕より早い。僕とほぼ同じスピードかもしれない。距離が詰まらないが、開きもしない。僕より早く歩く女性はたくさんいる。僕より早く歩く男性はさらにたくさんいる。僕より遅い人もたくさんいる。男女共に。スピードの差がそれぞれあり、歩き方の特徴もそれぞれある。もちろん体型もだ。僕たちはまるで、高速道路を走る自動車みたいに同じ方向へ進む。決してお互いに接触しないように適度な距離保ちながら、前方に見える存在の後姿だけを見ながら、運転席でハンドルを握っている。僕たちはまるで、互いの距離を維持したまま高速で膨張する星座のようだ。この星座を、通勤人座と呼ぼう。そうなると僕なんかは、消え入るばかりの輝きでしかない。