お客様同士

電車の中で、酔った老人が座席に座って、前に立つ会社員風の二人の若い男性に話しかけている。いかにも人生の経験者が若者に喋りそうな、典型的な訓示っぽいお喋りがえんえん続いて、それを困惑というか苦笑しながら若い二人が相槌うってるという図で、その老人の喋ってる内容のしょうもなさにも気が滅入るのだが、それを聞いてる二人の、やれやれ、まあ仕方がないなあという態度で、向けられる言葉には一応相槌を打って、お互いに顔を見合わせて笑って、相手に失礼にならない程度には返しも入れて、でも実際はどの言葉も一つとしてマトモには聴いてないという、要するに上手に聞き役をこなしているだけの、その小器用さというかそつのなさというか、見事と言えば実に見事なその態度にも、やはり気が滅入る。まあ、お客様同士のトラブルよりはマシか。でもどっちもどっちか。