故郷

ズルズル、ドロドロと深いところへ落ち込んでいった。落ち込んだ先でさらに厄介事が発見され、それでさらに深くへと進むことになった。ふつう誰も寄り付かないような、もうずいぶん人気の絶えたさびしい場所へ降り立った。でもこういうことは前にもあったなと思った。いや実は、僕の過去には、むしろこういうことばかりだった、ほんの少し前まで、こういう場所にばかり自分は降り立っていた。だから今、はじめて足を踏み入れたこの陰鬱な場所に、不思議ななつかしさを感じているのだと思った。このまま、ますます事態が悪くなったとしても、出口がさらに見えなくなるとしても、そうなればなるほど、心の中になつかしさが募るのかもしれないなと思った。最悪に近付くことが、磐石で安心できる過去へ戻ることに、よく似ているような気がするのだった。