和歌山

和歌山を旅行したのは、もう二十年以上前だ。新宮駅に降り立って、旅館に辿りついて、今なら絶対に選ばないような粗末な旅館だったけれども、我々も若かったから、あれはあれで楽しかった。翌日から新宮の図書館を経て、速玉、本宮、那智勝浦と神社を巡り、熊野古道を歩き、夜は湯の峰温泉に泊まって、翌日さらに串本、田辺、白浜へ移動し、海辺の古めかしいホテルの部屋から海を見下した。三泊もしたのか。そんな連泊の旅行はあれ以来ない。

こうして思い出すと、和歌山というのは、よくできてる。

その数年後、京都に行ったけど、京都は行くなら、庭園や障壁画や美術館が目的になりがちで、和歌山のように、ただその場所へという感じではない。和歌山は土地すべて寺社という感じがある。国立公園と化している伊勢志摩とも違って、もっと古来の様子がそのままという感じがする。

ふだん寺社仏閣にほぼ興味をもたない自分がそれらをありがたがるのも変だけど、京都より和歌山がよほど、古さのもつ安心と怖さを静かに感じさせるところがある(とはいえ昔のことで、今はどうか知らない)。