前夜までのあらすじ


横浜で一軒目のあと、悪い癖で一人で湯島方面に漂流して二軒目へ。魚介系前菜二皿と蝦夷鹿ロースト。なんの問題もない、一人でこうしてのんびり食事してるのが一番幸せだ、そのはずだった。会計して、店を出たとき、なぜか、ふと妙な気分になった。何かが気に掛かって、ふりかえりたいような、後ろ髪をひかれるような、得体の知れない気分に。しかし、それも一瞬のことで、結局、何事も無かったかのように地下鉄入り口まですたすたと歩き去っていく自分の姿を、今、あたかも幽体離脱した視点で、僕は自分を遠くから見下ろしている、そんな思いだ。