先週も昨日も来週も忘年会。けっこう高い金を払って、あんな水みたいな酒といい加減な食いものでばかみたいだが、でも久しぶりの人と会うのは楽しい。お開きの声がきこえて、一フロアに何軒の店が入ってるのかわからないような居酒屋雑居ビルのエレベーターが、帰る人間で災害みたいに混む前にそそくさと退店して、とてもだるい気分で駅に向かう。階段を降りながら、金曜日の夜の、電車が遅れていてホームに人が溢れているのを見下ろしてため息がでる。ぐったりとした気分で、帰ってすぐに着替えて寝る。


The BeatlesBeatles For Sale」より、"No Reply"、"I'm a Loser"と続けて聴くことの幸せ。このアルバムの冒頭二曲がこれというのは、世界が共通で授けてもらえた幸福の一つであった。またアナログB面に"Every Little Thing"が入ってることも。


Jimi Hendrixの「Johnny B. Goode」など、久々に聴いてしまう。しかし、なんちゅう荒っぽい演奏だろうか。ギターもボーカルも超乱暴でいいかげん。これを後年、世界中のギターをかかえた人々が必死にコピーしたなんて、ジミヘン本人が聞いたら「まじか」と驚きそう。というか本人が生きてたらこの演奏はまずリリースしないのではないでしょうかね。しかしこの、完全に思いつきだけで乗り切ってる、というか強引に行き切ってるのがまさにロックだなあ。ああ、ロックだ。拍子とノイズしかなくて、それで充分にいっぱいなのだ。ガタガタの骨組だけの車がそのまま時速三百キロ越えで走っているかのようだ。


D'Angeloの新譜が出る、というニュースを知る。それでリンクされていた1999年の映像(https://www.youtube.com/watch?v=m4XI6LXCsH8)を観たけど、やっぱりすごいわ。これは本当に十年か二十年に一度くらいしか聴くことが出来ない、今までとまったく異なる仕組みをもった何かが、何の承認も認知もされていないのに、平然と自らの決まりに基づき屈強かつ高速に動いているのをまざまざとみてしまったときの衝撃というか、驚きと恐怖と焦りと喜び、といったようなまぜこぜの感情をもたらす、そのような誘発力に満ちた演奏。いいとか悪いとか、好きとか嫌いとかの位相が根底からくつがえって破産してしまう感じ。こういう感じを、かつて他のミュージシャンに感じたことがあるかと問うたら、たしかに「80年代のプリンス」という答えくらいしか思い浮かばない。


妻が先に出かけたので、一人で外出。晴天。しかも暖かい。歩きながら、マフラーもコートも取った。昼ごはん食べて、食材と酒を買って、「赤毛のアン」DVDを、見終わった巻の次から最終話までぜんぶ借りる。毎日何話かずつみていて、いつもマリラ・カスバートのこと、ギルバートのことなど、アン以外の登場人物ばかりに気がいってしまう。アンは「パブリック・サキソフォン」みたいなキャラクターだし、ダイアナはほとんど性格というものが無いに等しく感じられる。


Maxwell の「Embrya」というアルバムが出たのは1998年。棚のCDが偶然目について、久々に聴いたら、BPMが超遅い。ピッチ下がってる?と思って機器を確認してしまった。でもこれで正しいのだ。こんなにゆっくりか。今の時代なら、けっこうスローなR&Bでも、さすがにここまで遅くないかも。そうでもないかしら。まあ毎日ハウスとかばっかり聴き流してるから感覚がおかしくなってしまったのかもしれないが。


宮崎駿風立ちぬ」DVDで観る。この映画は前に観た時も今回もそうだが僕はけっこう好きで、ああ困ったと思いながらつい見入ってしまう。結末だけでなく、途中においてもずっと息苦しいような憂鬱なものを感じているのに、よよと泣きたくなる。本当はここに書かずにこっそりと見て、見終わったら素知らぬふりをしてた方がいい。