白痴


また財布を忘れた。夜スーパーで買い物して、そのまま財布だけ置き去りにして帰ってきてしまった。家に帰って気付いて、あわててそのスーパーに戻って、幸い預かってくれていたので助かったのだけれども、なんかもう、ひょっとしたらもう、自分はもう死んだ方がいい人なのではないかと思う。ああ、どうすればもう二度と、財布を忘れない人間になれるのだろうか。夜空を見上げて問いかけてみる。同じ過ちをくりかえすことはしたくない、どうか人の世の末席に居させてほしい、こんな自分にもそれが可能だろうか、それとも過ぎた願いだろうか。そう問うも、空が応えてくれるはずもない。