マカヤ・マクレイヴン


行こうかどうしようかと迷っていたのだが、やっぱり行こうと思ってブルーノート東京のマカヤ・マクレイヴンのライブへ。アルバム「In The Moment」がけっこう良かったのでちょっと興味はあったのだが、しかし、どんなもんかなーと思っていたのだが、なるほどそうか、やはり実際に聴くのがいちばんいい。アルバム全編に漂ってたダラーっとした時間の流れ。その空気の中を、あるグルーブがエンドレスでいつまでもいつまでも演奏として続いていくあの感じはライブでもたしかに感じられたが、しかしさすがに音の粒立ちもキレもメリハリも強烈で、マカヤ・マクレイヴンのドラムはとにかく力が凄いというか音のひとつひとつが個々にガツンと直接来るような音で、それがきめ細かく敷き詰められてマシーンのようにリズムトラックを構成し、溜めたりキメたりするのもパワーはあるが汗っぽさや人間臭さではなくて、そこは現代的な感じである。あとドラムだけでなく、ギター、ベース、アルトサックス、あと小さなシンセサイザー2台をメンバーが操作して、それらによるバンドサウンドとして、とても魅力的だった。ドラムは音色やリズムのニュアンスをゆったりと変化させていき、じょじょに曲を変質させていって、波の高低や深浅にゆったりもたれかかりながら硬質のハット音がその先へ連れて行ってくれるようで、ベースは執拗にボトムラインを反復しつつリズムに艶と揺らぎを与え、各メンバーのソロはある色調の和を乱すことのない範囲でうねるように旋律を上下して曲を活気付ける。それらの渾然となったリズムの気持ちよさがひたすら素晴らしい。気持ちいいというか、かなりノリノリな、脈拍上がるような音なのだけれども、同時に気分いいという、その意味ではクラブミュージック的というかダンスミュージック的とも言えるかもしれないし、どこから始まってもいいしどこで終わってもいいような感じもある。アルバム「In The Moment」だと、わりと乱暴なフェードアウトで曲が終わってしまうのも多くて、まるで録音した多数の音源を適当な時間に切り詰めて並べて収録しただけみたいなニュアンスもあり、なぜこんな編集を?と不思議に思ったりもしたが、本ライブでは当然ながらそんな印象は薄く、ずいぶんソウルフルというか熱い演奏で、如何にも最近の"何とか以降"とか言われそうな曲もあり、少しテンポ落とした曲やベースの人の歌(素晴らしい)もあって、そういう曲でギターやサックスが慎ましくも確かなソロで曲を組み上げていくのも素晴らしかった。なるほどと、たしかにこういう感じって、今まで聴いたことないかもしれないと思った。くどいようだが、ギターもアルトもベースも、あの人達の演奏、ほんとうにすごく良かったなあと、今も思い出してしまう。帰りはけっこう遅くなったけど、これはやはり行かない手は無かった。聴く耳の領域が広がった気がして喜ばしい。