Yer Blues

どのように作られた曲なのか、この感触、粒子のざらついた、狭くて窓のない地下のような室内、その中ですべての音が反響し合って互いを打ち消しあっている、ベースの音は痩せているのに篭っていて、アタック音の硬さが目立ち、耳障りな感じで拡散する、ギターの音にも奥行きや豊かさがない、つまり録音が悪い、全体的にオフ気味でノイズを多く含む、演奏一発で録音された感じではない、そういう臨場感めいた印象はない、イントロのカウントから、ドラムがインする部分、ボーカルが入ってくる部分、それぞれ連続した一つながりじゃなくて、元々はばらばらだったんじゃないか、まるでスタジオ機材で作られて、断片を繋ぎ合わされた感じ、ブルース楽曲でも、そういうのを感じさせる曲とまったく感じさせない曲があって、ギターの繰り返されるフレーズが、ややフラット気味というか、ちょっとチューニングが狂ってるような、あるいは録音してるテープのピッチが微妙におかしいのではと疑いたくなるようなところもそうだ。時代的にはもっと後に出現するようなある種の音楽ジャンル的な雰囲気がすでにここにはあるのかもしれないが、ただし、だからこの曲は新しい感じがするというわけじゃない、古くもないが新しくもない、ある種の雰囲気はある、というだけだ、そしてジョン・レノンによるボーカルはブルース歌唱というかエモーショナルというか絶叫系のやかましいスタイルではあるが、それにもまるで熱や血の通ってない、白けたものを秘めているようには感じられないか、叫べば叫ぶほど、裏側に冷笑が貼り付いているような、まるで他意のない純度の高い悪意というか、心をざわつかせずに済ますのは難しいような滑稽感がまとわりついてないか、後半のギターソロは、あれはほんとうにギターの音か、無理に引き延ばされた人の声にも聴こえるけど、やはりギターの音なのか、これも最後はやや唐突にドラムがフィル・インして元のループに戻り、やはりこの曲がふつうとは別の推進力でここまで奏でられていたんじゃないか、それを思い起こさせられて、そうなっているのか、どうなっているのかと思う。