夢二題

また夜中に「うわ!」と叫んで目覚めて、隣の妻を驚かせた。悪夢というか、怖い夢。叫んで目を覚ましたのは今月でたしか二度目。さすがに多い。たぶん僕は、怖い夢が好きなのだろうと思う。抑圧された何かとか、ストレスとか、そういうものが見させるイメージじゃないと思う。単なる娯楽的恐怖感の気がする。

今月の最初に見た方は今思い出しても少し怖い。神社の境内に続くような急斜面の階段を昇っている。階段ははるか上まで続いているが、周囲は次第に曇って薄暗くなってきて、視界がどんどん悪くなる。それが天候や空気の濁りによる視界の悪さなのか、自分の視力が低下したことによるものなのかが判然としない。ぼやっとした不安をかかえたまま、それでもとにかく昇りきってしまおうと決めて、すでに白濁して何も見えない周囲にあえて身を預けるようにして、視線を斜め上に向けてひたすら昇り続けている。すると片足に軽い違和感を感じる。何かと思って目線を下に向けると、全身が真っ白な布に覆われた人がいきなり足元に寝そべっていて、こちらの足を掴んで引き止めようとしている、それを見て「うわ!」と叫ぶ。

  昨夜見たのは、説明するのが難しい。洞窟の中みたいな暗闇で、ぼんやりとした蝋燭の光の下、ある古文書のようなものを見せられる。A3くらいの大きさで、かなり古いものらしく端はボロボロに朽ちている。何が書いてあるのかと目をこらすと、日本語なのか別の言語なのかはよくわからないが、わりと大きな字で紙の上にぼーん、ぼーんと投げ出されたような文字で、それがまるで紙から浮かびあがって、文字だけが宙に浮き上がって紙の上に自らの影を落としているような状態で、紙が揺さぶられるたびにその間隔が微妙に変化してまるで生きたもののように揺らめく。それを見て「うわ!」と叫ぶ。

とくに昨夜のは、いったい何が怖いのか、叫ぶほどの怖さがどこにあるのかが、もはや現時点の自分にもわからない。