今年の夏

いよいよ夏ですね…との声が、空から降ってくるみたいな快晴。汗を拭うハンカチが手の中で重くなる。ネズミ色に乾いて足元の汚物がカラカラに干からびていて朝から汚らしい駅のホームに液晶を光らせた最新のJR線が入ってきて、中にはよれよれのTシャツを着てリュックを背負ったねこぜの子供たちがぎっしり乗ってる。空調の効いた車内からガラス窓一枚隔てた外の明るさに目が眩む。死ぬなら夏がいいな、しかし夏だと腐敗がねえ…。ふいに周囲が静かになって、耳鳴りがして、高い音がしばらく続いて、唾を飲み込むと喉の奥がまだ痛みに沁みる。だまって「フラニーとズーイ」の続きを読む。マティーニが飲みたい。ガキのくせに白人は酒に強いね。当方相変わらず喉も鼻も本調子でなく、今週はまるで味覚がだめで、今日にいたってもまだ、酒にせよ食事にせよぜんぜんわからないので、昼も夜も張り合いがなくてだめだ。まあどうでもいいや。