消費期限

上條淳士To-y」読み終わった。これ以上ないほど紋切り型で、まともに受け止めても仕方ないくらい荒唐無稽な芸能界ストーリーだが、当時の文化や風俗の描写が細密で、如何にもな雰囲気を作り上げていて、東京の新宿とか渋谷とかの景色もリアルで、もちろん全て80年代後半の景色ではあるのだが、しかし読み終えた印象として、バカバカしい荒唐無稽さも、細密なリアルさも含めて、今も三十年前も、ほとんど変わってないように思える…というか事実は、実際ほとんど変わってないのだ。景色もお話も、あれ以来ずっと、ほぼ停止したままなのだな…と思った。世の中の方が、あまりにも何も変わってないので、作品としてとっくに消費期限切れしているはずなのに、なぜか今でも全然食べられるという印象を受けたが、そんな風に思うのはさすがに僕だけだろうか…。