マーク・ファリーナ

休日は延々音楽を聴いているような状態なのに、平日になるとピタッと聴かなくなる。音楽を聴くときの身体的な構えが、休日にしかあらわれなくなってきた感じがする。とはいえ休日に何を聴いているのかと言ったら、ほとんどハウスばかりで、ハウスに身体を完全にあずけたくなるのが、休日の日中の家にいるときなのだ。数日前、マーク・ファリーナの十年以上前のミックスを、日が暮れるまであらかた聴きつくす勢いで再生しながら、iPhoneのライブラリにも順次格納の作業をしていた。(CDをインポートするにはiTunesが必要で、しかしWindowsiTunesは、この世界に残存するソフトウェアの中でも断トツに地獄級の最悪さを誇る強烈な代物であることをこの作業のたびに思い出す。)そこまで手間をかけて準備したのに、平日になるとさっぱり聴かないのだからバカみたいだ。

ハウス・ミュージックにおけるマーク・ファリーナのサウンドは、他のDJとは一味も二味も違っているように思われる。ふつうに聴いていると単に陽気で能天気な、いかにもな四つ打ちのパーティー音楽に聴こえるのだが、なにしろ元曲の分解度が半端じゃないというか、とにかく一曲がずたずたに、粉々に粉砕されて、細かい切り身になった要素が再び強引に結びつけられて、ズレをはらみながらも危うく元の一曲としての均衡を保ちながら無理やりビートに乗せられている感じで、テイストとしてはぜんぜん違うけど、それこそJ Dilla的な世界と通じ合うところもある気がする。なまじ明るくて陽気な雰囲気なので、まるでげらげらと笑いながら、深い部分で手の施しようもなく狂ってしまっている感じがして、そういうとこが好き。