絲的ココロエ

絲山秋子「絲的ココロエ」を読んでいた、まだ半分くらい。

病気とはケミカルなもの、しかし薬だけで治すのは難しい。双極性障害の治療、それはまず患者が矢面に立って闘う、弱気や悪い考えや自分を責める心を避けて、自分に対しても周囲に対してもフェアな態度で、情緒に流れず、病気を相手に正々堂々と立ち向かう。それを担当医が、過去の実績や知見に基づいて援護射撃する、患者の周囲にいる人間は、同情や共感ではなく専門医の著作などによる病気への正しい理解によって治療する患者を見守る。各々が、各々の役割を正しく把握することで、治療は進む。この役割分担はおそらく精神病の治療にとどまらない、社会的な人間が相互に担う役割分担の基本形式と言えるだろう。自分の身体から正しく心へサインが送られないのは心の変調で、でもそれを正常に機能させるには正しくこの世界に私が組み込まれていると信じられなければ、人は自らの身体さえまともに制御できなくなる。必要とされていると自分に信じられる役割を演じることで、自他を共に納得できるイメージとして認識し合い、そこに事後的な自分の姿を見出す。それしかないので、だからこそ同情や共感ではなく理解が必要だからこそ、日頃の勉強も、絶え間なく必要なので、年齢を経たからといって中途半端な自己満足に浸っていてはダメ。

しかし書き出しとか、端々に出てくる物の言い方の切れ味など、如何にも絲山秋子っぽい文体がカッコいい。すごくキッチリと計画して物事を確実に進めるタイプなのだろうなあ…と思うし、なぜ僕はこういう感じの人物が書く文章を好むのかと、我ながら不思議に思う。