声と文

こちら側の拠点とあちら側の拠点に、それぞれ二人ずついる。マイクはこちら側にしかないので、我々はふつうに話をするけど、あちら側のふたりはキーボードでメッセージを入力する。こちらが言葉を投げかけて、しばらく待つと、モニターに相手の反応が文字であらわれる。それを読んで、こちらは再び、声で反応する。ああなるほど…とか、了解ですとか、笑い声を上げたりとか、そういう反応をする。反応しないと相手に伝わらないから、こちらは沈黙せずわかりやすく反応するように心がける。声の言葉と書いた言葉が、お互いの会話が自然になりたつように意識しながら、いつもより少し大げさな身振りで自分自身を演じている。