高田馬場

97~98年頃、高田馬場にバイト先の事務所があって、月に一、二回ほど通っていた。たぶん半年かそこらだけの期間だったはずだが、なぜか今でもやけに記憶に残っている。マンションの一室を改造した内装の感じ、エレベーターの二階に上がってドアを開けるときの感じ、事務所の人が二人、あと社長、ほんとうに些細なその場だけのだったのに、なぜか妙によくおぼえている、ような気がする。

今や高田馬場に行く機会もほとんどなくなって、一昨日訪れたのがおそらく十年ぶりとか、そのくらいじゃないだろうか。高田馬場、変わったような、変わらないような、昔を、よくおぼえてるような気がするだけで、大しておぼえてないのかもしれないし、そうでもなくて記憶からさほど変わらないから驚かない、のかもしれない。周囲をきょろきょろと見渡して、自分の記憶との差異を、細かく確認したくなる。事務所があった建物も、おそらくまだそのままそこにある。たぶんあれが、そうだ。そうだろうと思うのだが、ちょっと自信ないところもある。その程度には色あせてしまっている。もちろん建物があっても、事務所はすでにないはず。それは確かめるまでもないことだ。あったら怖い、それこそホラーである。ましてや中に人がいたら、もっと怖い。まあ、そんな面白いことはありえない。実際は何もないし、過去も消えている。